倉庫・工場移転は、事前にしっかりした計画が必要となります。そのためには、まず現状の問題点を明確にして今後さがすべき物件の必要条件を確認することが大切です。
1, 移転理由のリストアップ
- 敷地面積についての問題(広い・狭い・天井の高さ)
- 工場・倉庫には欠かせない車両搬入・搬出の問題
- 近隣からの騒音・駐車などのクレーム
- 賃料・更新料の問題 など…
上記の様に移転を実施する上での条件を選定し、また「どの条件を優先すべきか」と順位をはっきりさせておく必要があります。
2, おおまかな移転スケジュール
移転にはまず「新倉庫・新工場物件探し→物件の決定→新倉庫・新工場の契約及び旧倉庫・工場の解約予告→移転」という流れになります。自社の業務スケジュール、現拠点の解約予告時期のタイミングなどを照らし合わせ、移転時期の目安を立てていきます。その時、移転作業の内容と必要時間を考えることで
- いつまでに物件を選定しなくてはならないか
- 旧倉庫・工場の解約時期のタイミング
など、期限をしっかりと決めておくことが大事です。
3, 自社に適した倉庫・工場の選定
お客様の荷物の種類、及び荷姿によって使用目的にあった倉庫・工場を探していきます。倉庫・工場の形態として主に、「平屋倉庫」「多層階の倉庫」「低床式」「高床式」「自走式(マルチタイプ)」などに分けることができます。それぞれの種類にメリット・デメリットがありまので、それらを考慮した上で使用目的に合った倉庫・工場を選定していくことが大切です。
使用用途
お客様の荷物種類、業務の内容などから事務所の有無、駐車場、天井の高さ、間口の広さ、シャッターの種類、外壁の種類、電気容量、建物構造及び接道の種類・広さなど条件を確定します。
必要面積
作業や機器スペース、保管の形態、倉庫内常駐の使用車両の台数などから必要な建物面積、天井の高さ、敷地面積(ヤード)などを割り出していきます。
立地条件
高速道路インター、主要幹線道路等のアクセスや最寄駅&バス停からの所要時間とダイヤ、従業員通勤費や駐車場、用途地域、住宅街との距離(騒音クレーム等の回避)などをチェックします。
移転や移設の時期
現在の物件の解約予告期限と移転後の開業スケジュールとの兼ね合いを考え、新倉庫・工場の入居可能日などを調べます。
移転に際する予算・コスト
賃料、預託金(敷金・保証金/物件により)、礼金・更新料・敷金償却、管理費、工事費、移転費用等の予算を選出します。
4, 新倉庫・新工場の契約
条件に見合った物件が見つかった場合、移転先の貸主と契約を締結します。双方に不審な点が無いよう、細部にわたった確認が必要です。契約時はお互い納得するまで話し合い、両者合意のうえ捺印する事が重要です。(契約には様々な確認事項があります。下記はおおまかな流れであり、ほんの一例です)
入居申込書の提出→重要事項の説明→預託金の支払い→契約書に押印
契約時には下記のような書類を前もって用意しておくとよいでしょう。
- 入居申し込み書(仲介事業者が用意)
- 会社の登記簿謄本
- 会社の印鑑証明書
- 代表者の印鑑証明書
貸主の承諾後、必要となるもの
- 手付金(敷金・保証金の20%以内が相場)
※通常、解約手付け金としての意味を有しますが、状況によります。 - 契約書
正式な賃貸契約がこの書類で決定します。
契約書のチェックポイント
契約形態
賃貸借契約は、従来通りの借家契約(普通借家契約)と、更新がなく契約期間毎の再契約となる定期借家契約の2種類がある。契約により大規模造作を行う上でのリスクが高くなるため、疑問があれば業者等と相談が必要。
契約面積
契約書に記載される面積のこと。専用部分を壁芯計算したものを契約面積とするケースと、共用部分を加えて契約面積とするケースがあり、法的な規則は無い。契約時に確認する。
・共用部分を含むか含まないか。 トイレ、駐車場、通路や1階荷捌き場所は?
・単位が「坪」か「㎡」かで賃料の総額が微妙に変わってきますので、確認が必要。
賃料
通常、振込手数料は借主負担。入退去月の賃料・共益費は、日割り計算によることが多いが、1ヶ月分を全額支払う内容になっている場合もあるので確認が必要となる。賃料が周辺相場と著しく釣り合わなくなったとき等は、契約期間内でも協議のうえ改定される場合がある。
敷金(保証金)
敷金や保証金などは本来預かり金です。解約した際に返還される時期、地域やオーナーによっては敷金の償却(敷引)があるので、その場合敷引がある場合どのくらいの割合なのかも事前にチェックが必要。
原状回復
契約終了時に入居していた物件を原状回復する義務を負うのが一般的です。壁や天井、床仕上げ材の塗装、張り替えなどを行い、その費用を負担することが多いが、工場・倉庫の場合特に入念な打ち合わせが必要。また原状回復の範囲を契約書で事前に確認する。
- 入居時に原状をデジカメなどで記録しておくと良い。
- アンカー処理、防塵床塗装、空調機、残置物の処理等、通常貸主指定の工事業者に発注するように定められる。
解約予告期間
一般的な解約予告期間は6ヶ月、12ヶ月(あるいは3ヶ月)前というものが多く、貸主または管理会社などへ書面にて通告するように義務付けられていることがほとんど。契約時に何か月前の解約予告なのかを注意が必要である。もし、予告期間に満たず途中解約(即時解約)をする場合は、予告期間までの賃料を支払わなくてはならない場合が多い。この場合は「賃料だけなのか」または「共益費も必要なのか」といった点も注意。
設備の所有
賃貸物件内の各設備の所有権を確認する。※貸主所有設備の場合は、経年による故障は貸主が修理・交換をするが、前契約者の残置物の場合、こちら修理・交換が必要となる。
5, 退去する施設の契約を解約
移転先がほぼ決まった場合、入居している物件を退去する準備に入ります。解約予告期間に満たないで退去する場合は、足りない分の賃料・共益費を支払う必要がありますので、現在の契約書をよく調べ、対応してください。(普通は3ヶ月~12ヶ月前に予告が必要です)また原状回復は工事も必要になりますので、現在の貸主と十分に話し合い、問題のないよう完了する必要があります。